その夜、冷たい月明かりの下で、小さな産声が響いた。
その子は、生まれた瞬間から愛を探す旅を始めていた。
父は繊細な人で、母もまた誰よりも繊細な人だった。
その家には、父の母――「助けてあげる」と言いながら、家族を支配しようとする人がいた。
幼いその子は、大人たちの期待や不安をすべて身に受け止めていた。
2歳を過ぎたある日、母は家を出ていった。
残された父は愛を失い、その痛みを酒に変えて生きていた。
祖母は「かわいそうな息子」を支えるふりをしながら、その笑顔の奥に冷たい影を宿していた。
まるで「私がいなければ、誰も生きられないでしょう?」と囁くように。
その子はいつも周りの顔色を見ていた。
「わたしはここにいていいの?」――小さな胸で何度も問いかけた。
大人の言葉は時に優しく、時に残酷で、子どもの心に重くのしかかった。
そんな日々の中で、父に新しい愛が訪れた。
それは、春の光のようにあたたかな出会いだった。
その人は、笑顔の奥に強い決意を秘めていた。
「この子の居場所を、わたしがつくる」――その言葉は、血のつながりを超えてその子の心に真っ直ぐ届いた。
2018年4月のある日、その人とその子は「親子」になった。
血の契りではなく、魂の約束で結ばれた家族。
その日から、母は何度も言った。
「わたしは、あなたにとって絶対的な安全基地になるよ」
その言葉は、幼い心を温める毛布のようだった。
小学校に入ると、その子には発達の凹凸が見え隠れした。
人と話すことや、みんなと遊ぶことが怖くなる日もあった。
でも母はいつも「大丈夫だよ」と言い、「一緒に笑おう」と言ってくれた。
ハンバーグに旗を立てて、「今日は世界一のごちそうだよ!」と笑った。
泣きたい日は、お風呂に入りながら、ふたりでふざけた歌をうたった。
笑いながら泣いて、泣きながら笑って――その夜はやっと眠れた。
ある日、その子は母に言った。
「わたし、本当の家族ができたんだね」
その瞬間、母は心の奥で泪をこぼした。
「そうだよ。血より深い心のつながりが私たちを家族にしてくれたんだよ」
その言葉に、胸の痛みが少し溶けていった。
中学生になると、友だちや初恋に胸をときめかせる日が増えた。
時には心がちくりと痛むこともあったけど、母は笑い飛ばしてくれた。
「恋もケンカも、全部あなたの物語だよ」
そう言いながら、母はそう豪快に笑い飛ばした。
母の言葉は、どんなに寒い夜でも心を温めるおまじないだった。
高校生になると、その子は「幼稚園の先生になりたい」と話した。
自分が欲しかった“安心できる場所”を、ほかの子にもあげたい――
その願いは、少しずつ形になっていった。
夜間の専門学校に通いながら働き、その姿を母は黙って見守った。
「この子はもう、誰の支配も受けない。自分の力で生きていける」
そう思うと、母は夜空にそっと手を合わせた。
それでも時々、泣きたくなる夜は訪れる。
夢と現実のはざまで揺れて、どこにも居場所がないような気持ちになる。
でも大丈夫――蠍座の月のように、何度でも再生する力がその子には宿っている。
泣いてもいい。泣きながら笑ってもいい。
母はいつだって、そばにいるから。
「あなたの笑顔が、わたしの夢だから」――そう言って母は、夜空を見上げる。
今、この物語を読んでいるあなたへ。
もしあなたが「継子との関係に悩んでいる」なら、どうか思い出してほしい。
血のつながりじゃない家族もある。泣いて、笑って、時にぶつかり合ってもいい。
大切なのは「わたしはあなたの安全基地になる」と心から思えること。
その思いがあれば、どんな不安も小さくなるから――。
この物語が、あなたにそっと寄り添い、血を超えた絆を信じる勇気を届けられますように。
全ての子どもたちの未来へ祈りを捧げます。
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