はじめに
人はなぜ嘘を吐くのか。心理学では自己防衛、社会的適応、または利得追求のためと説明される。しかし占星術の視点に立つと、それは単なる性格傾向ではなく「星の配置が織り込む必然的な表現」と見ることができる。柔軟宮を強く持つ人は流動的であり、環境や相手に合わせて振る舞う力を持つ。その柔軟さは才能である一方で、「真実を曖昧にする傾向」にもつながるのだ。
田中圭という象徴的ケース
俳優・田中圭がポーカー世界大会で好成績を収めたというエピソードは、占星術的に興味深い。ポーカーとは嘘と真実の境界線を自在に行き来するゲームだ。手札が弱くても堂々とした態度で相手を降ろし、強いカードを持っていても油断させるために弱気を装う。これは「駆け引きの芸術」である。
彼の月が射手座にあるとすれば、射手座の特徴は「誇張」と「物語化」である。事実を大きく膨らませて話す癖は、悪意というよりも「世界を面白く見せたい」という衝動に近い。射手座の月は理想を追いかけ、現実を装飾することに喜びを感じるのである。
柔軟宮と嘘の関係
柔軟宮の星座は双子座、乙女座、射手座、魚座。彼らは固定宮が象徴する「一貫性」や活動宮が示す「突破力」とは違い、「流れに適応する力」を持つ。
双子座♊
言葉の星座。瞬発的な反応力と軽妙な会話力が特徴。気を利かせるために場当たり的な嘘をつきやすい。本人に悪気はなく、嘘を吐いた自覚すら薄いこともある。嘘というより「会話の潤滑油」としての虚構である。
乙女座♍
真面目で潔癖。基本的に嘘を嫌うが、秩序を守るために「必要な建前」として嘘を用いることがある。不正や不誠実に対しては強い拒絶を示すため、意図的な嘘より「黙して語らない選択」のほうが多い。
射手座♐
誇張と楽観。自分の物語を大きく語ることで他者を鼓舞しようとするが、結果的に「大げさすぎる話」になってしまう。本人は嘘の意識が薄く、「夢や理想の表現」として語っている場合が多い。
魚座♓
現実と幻想の境目を曖昧にする。嘘をつくというよりも、現実を直視せずに「消えてしまう」傾向を持つ。人を欺くよりも、自分の中で物語と現実を混ぜてしまうために、結果として他人からは嘘に見えることがある。
家族のケースから見る「嘘の色」
実例として、我が子のホロスコープを見比べてみると性格の違いが如実に出る。
長女は蠍座♏に天体集中(ステリウム)を持つ。不動宮の強さは「信念の固さ」として現れ、嘘を嫌う傾向となる。彼女にとって嘘は「信頼を壊す行為」であり、耐え難いものだ。
次女は月が双子座♊。彼女にとって嘘は挨拶のように自然なものだ。相手を楽しませるための軽口や、場をなごませるための作り話は日常の一部。こちらが真剣に受け止めると不安になるほどだが、彼女自身に悪意はない。
末娘はASCが射手座♐。その影響は「自由奔放さ」と「物語を大きく膨らませる力」として現れる。彼女の話は誇張が多いが、聴く人を楽しませる天性の表現力を備えている。
嘘の構造を読む占星術的視点
ハーフサム占星術では「水星/海王星」がしばしば「虚構・欺瞞・想像力」として語られる。また、プログレッションにおいて月が魚座に移動する時期は「曖昧さ」と「逃避」が強まる。これらは「嘘が生まれやすい星の時間」を示している。
さらにマンデン占星術の観点では、社会全体が柔軟宮に支配される時期は「情報の混乱」「フェイクニュース」の流行を意味する。個人の嘘と社会の嘘は、同じ天体の配置の下で共鳴するのだ。
嘘をどう扱うか
嘘は必ずしも悪ではない。時に相手を守り、場を和ませ、未来を希望で彩ることもある。しかし嘘に縛られると信頼を失い、自分自身を見失うことになる。
占星術は、その人がどのような嘘をつきやすいかを示してくれる。双子座の軽口、射手座の誇張、魚座の曖昧さ、乙女座の建前。それを理解することは、他者を赦すための道しるべになる。
嘘をどう扱うか?
嘘は必ずしも悪ではない。時に相手を守り、場を和ませ、未来を希望で彩ることもある。しかし嘘に縛られると信頼を失い、自分自身を見失うことになる。
しかし、嘘は時に必要である。嘘が悪なのではなく、不必要な嘘を重ねて相手を傷つけたり、信頼を裏切るようなことは【嘘吐き】というレッテルを自分から引き寄せてしまう。わたしは子どもたちに「嘘をつくこと」を禁じている。なぜなら、それは最終的に自分を苦しめるからだ。けれども同時に、大人になったら自分の責任で嘘をつき、その責任を引き受けなければならないとも伝えている。本音ばかりでは自分が傷つく場面に遭遇するからであり、特に社会生活では時に嘘は避けて通れない現実があるからだ。
ただし「本音と建て前」はまた別の話である。社会に適応するための潤滑油としての建前は、人を欺く嘘とは性質が違う。子どもたちには、できるだけ人を疑わず、信頼できる人たちに恵まれるように生きてほしい。そのためには、まず自分自身が【誠実に生きる】ことを選ぶことが大切である、と強く伝えていきたい。
占星術は、その人がどのような嘘をつきやすいかを示してくれる。双子座の軽口、射手座の誇張、魚座の曖昧さ、乙女座の建前。それを理解することは、他者を赦すための道しるべになる。
まとめ
嘘を吐く人たちを占星術的に眺めると、それは星の性質の表現形態に過ぎないことが見えてくる。柔軟宮は嘘をつきやすいが、それは彼らが「変化に適応する存在」である証でもある。不動宮は嘘を嫌うが、その頑なさは時に融通の利かなさとなる。活動宮は「目的のために嘘を使う」ことがあるが、それもまた行動力の一部だ。
つまり嘘とは星の声であり、人間の生存戦略である。占星術の眼を通せば、私たちは「嘘の質」を読み取り、そこから人の本質に触れることができるのだ。