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天体イベントとしての「蝕」が語る本来の対象
占星術の長い歴史を紐解けば、古来より天空で繰り広げられるドラマは、常に地上の巨大なシステム、すなわち国家や統治者、そして社会全体の行く末を映し出す鏡として扱われてきました。
その中でも、太陽や月がその光を失う「蝕(エクリプス)」という事象は、個人の日常的な喜怒哀楽や、安易な心の揺らぎを説明するためのものではありません。
昨今、SNSを中心に占星術を心理面と結びつけ、日蝕や月蝕が起きるたびに個人の感情や意識の変容を過剰に強調する風潮が目立ちます。
しかし、本来の星読みの基本に立ち返るならば、蝕が示す影響の矛先は個人のNチャートではなく、国全体の動向や国民の集合意識であるべきです。 個人の太陽や月の度数に対して、蝕が直接的に大きな影響を与えるということは基本的にはありません。なぜなら、国家という巨大なグリッドの中で法律や社会に縛られて生きているわたしたちにとって、蝕のような大規模な天文学的現象は、個人の裁量や心理的な納得の範疇を遥かに超えたマクロなイベントを引き起こす引き金だからです。今回は、過去の動かしがたい事実を基に、蝕が国単位にどのような事象をもたらすのか、そしてなぜ心理面に終始する論説が本質から外れているのかを、客観的なファクトとともに導き出していきます。
2012年5月21日:日本列島を包んだ金環日食と国家の動き
具体的な検証データとして、まず2012年5月21日に日本国内で観測された金環日食の事例を振り返ってみましょう。この時、日本列島の非常に広い範囲で、極めて好条件での観測が達成されました。 日本国内において、これほど広範囲にわたって金環日食の帯が展開したのは、1080年以来、実に932年ぶりの快挙であり、文字通り歴史的な天体ショーとなったのです。
観測領域が示した総人口の3分の2への影響
この日食が通過したルートを精査すると、その影響が個人の部屋に留まるものではないことが一目瞭然です。
九州地方南部、四国地方南部、近畿地方南部、東海地方、関東地方など、太平洋側の主要都市を含む地域が金環日食の領域に美しく入りました。 特に、東京、横浜、名古屋、静岡、大阪といった日本の心臓部とも言える大都市圏の真上を中心食線(太陽と月が最も綺麗に重なる中心の帯)が通過したのです。これは、当時の日本の総人口の約3分の2に相当する、約8300万人が住むエリアで金環日食が直接目撃できる環境であったことを意味します。 中心食線付近での継続時間は最長5分前後に達し、この帯から外れた北海道や東北地方、日本海側の地域、南西諸島などでも、太陽の大部分が月に隠れる極めて深い部分日食が観測されました。当日の朝は日本列島の多くの地域で天候に恵まれ、雲の切れ間から多くの人々が遮光グラス等を用いて同じ空を見上げるという、巨大な社会現象が巻き起こったのです。
日食の前後で起きた国内・国際イベントのタイムライン
この世紀の天体ショーが起きた時期の前後には、個人の内省などではなく、国家の意思や社会の骨組みに直結する重要なイベントが時系列に沿って展開していました。
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5月13日:北京において日中韓首脳会議が執り行われ、安全保障や経済連携に向けた重要な対話が行われました。外交問題や国同士の関係性にフォーカスが集まるタイミングです。
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5月18日:米国市場にてFacebook社がナスダック市場への新規上場を果たし、当時のIT業界や金融市場のバランスを大きく揺り動かす話題となりました。
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5月21日:日本全国を巻き込む規模で金環日食が展開し、国民の集合意識が一時的に一つの天文学的現象に集中する社会現象が起きました。
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5月22日:日蝕の翌日、世界最高の高さを誇る自立式電波塔として、東京スカイツリーがグランドオープンを迎えました。周辺地域を含めて大規模な開業イベントが実施され、日本の新しいランドマークとしての役割(MC的な社会への提示)がスタートしたのです。
このように、太陽という国家のエネルギーが遮られる瞬間の前後は、国単位での決定や、社会のインフラ・経済における巨大な節目が不気味なほど連動して動いていることが分かります。
2017年8月21日:北米大陸を横断した皆既日食と政治の激動
蝕が国単位でのイベントを考慮すべきであるという真理は、海外の事例を見ても完璧に証明されます。
2017年8月21日、北米大陸を西海岸のオレゴン州から東海岸のサウスカロライナ州まで、太陽が完全に月に隠れる皆既日食の帯が横断しました。 米国本土で皆既日食が観測されたのは38年ぶりのことであり、大陸を完全に横断する形での観測は99年ぶりの快挙として、全米で数千万人が空を見上げる一大社会現象となったのです。アメリカという国家全体の意識が、この蝕のグリッドにハッキングされていたと言っても過言ではありません。
トランプ大統領のフェニックス集会にみる蝕の引き金
この天体イベントの翌日となる現地時間8月22日、米国の政治の現場では極めて緊迫した動きがありました。 ドナルド・トランプ大統領(当時)が、アリゾナ州フェニックスで大規模な支持者集会を開催し、演説を行ったのです。
当時は、その直前にバージニア州シャーロッツビルで発生した白人民族主義者らと反対派の衝突事件を巡る大統領の発言が、激しい議論を呼んでいた時期でした。 集会が行われた会場の周辺では、大統領の支持派と大規模な抗議デモ隊が真っ向から対峙し、警察が出動して催涙ガスが使用されるなどの緊迫した事態へと発展しました。この様子は主要ニュースで大々的に報じられ、国家のトップを象徴する太陽が蝕によって揺さぶられた直後、社会の分断や対立が一気に表面化するというマンデン占星術の厳格なルール通りの顕現となったのです。
どうして人は過剰に心理面を強調するのか
これほど明確な国家単位のイベントや事実(ファクト)の連動があるにもかかわらず、どうして現代の多くの人々は「日食があなたの内面に与える影響」や「新月の蝕による心のデトックス」といった心理面ばかりを強調するのでしょうか。
その理由は、人間という生き物の本質的な弱さにあります。 私たちは誰しも、先行きが見えない世の中や、自分の力ではコントロールできない社会の激流を恐れます。地震や経済危機、物価高や外交の緊張といった事象は、個人の日々の労働や努力だけで抗えるものではありません。だからこそ、見えない未来を恐れるあまり、情報を集め過ぎて溺れ、自分のフィルターに都合よく通した「心理的解釈」に逃げ込もうとするのです。 星の配置を自分の都合の良いフィルターにすり替えて、「あなたは悪くない」「心の膿が出ているだけ」と慰める安易な心理占星術は、一見優しく寄り添っているように見えて、実は目の前の人から現実と向き合う強さを奪い去っています。学問としての占星術の厳格なルールを無視し、自分の都合の良い物語を付け加えるのは、真理に対する冒涜です。 星が示すものは、現実世界における一つの経験に過ぎず、そこに伴う社会的なバイブレーションを冷静に把握することこそが、プロとしての矜持ではないでしょうか。
辛うじて個人に影響を与える「アングルでのオーブ1度未満」の例外
もし、この蝕という巨大なエネルギーが個人のホロスコープに影響を与えるケースを辛うじて考えるのであれば、それはアングル(ASC、MC、DSC、IC)に対して、オーブ(許容範囲)が厳密に1度未満という極めてタイトな条件で蝕の度数が接触している場合のみです。
アングルという、個人のアイデンティティや身体の器(ASC)、社会的な役割(MC)の起点となる重要な点に対して、正確無比なグリッドで蝕が重なった時に限り、その人間の人生の歯車に直接的なフックがかかる可能性はあります。 しかし、その特定の度数が自分のチャートの点と完全に一致しているかどうかを確認するためには、日本中、世界中の土地のチャートを出し、時間を詳細に調べて1分ずつ分析せねばなりません。それは大変な、気の遠くなるほどの作業を必要とします。 蝕が起きる頻度自体も、そしてそれが特定の地域で綺麗に観測できる機会もめったにない以上、それを毎度のように個人の心理的ドラマにこじつけるのは、明らかに勉強不足であり、技術の乱用です。
結論・大難を小難にするための、地に足のついた星読みへ
占星術とは、根拠のない恐怖を煽ったり、一生答えの出ない他責の迷宮でうだうだと言い訳を探したりするためのツールではありません。
国全体の情勢や宇宙のリズムをマンデン占星術の視点から冷静に読み解き、全体像を把握した上で、 大難を小難に、小難を無難にするための知恵 です。
テレビのニュースやネットのフェイク情報の波に洗脳されず、事実(ファクト)のみを見極める力を養うこと。個人の小さな感情の揺らぎに星を投影するのではなく、私たちは日本という国家、社会というシステムの中で生きているというルールを星から正しく学ぶこと。 日々の家事や労働という終わりのない現実のルーティンを淡々とこなしながら、宇宙の大きなリズムを感じ、自身で適切な危機管理(足元の備え、家計の管理、情報の精査)を行うこと。それこそが、五感とインスピレーションを研ぎ澄ませてこの時代を生き残り、大切な足元を絶対的な安心の場所として整えるための、唯一の最短ルートとなるのです。


